Apple川崎から見る今後の日本におけるマーケティング

Apple川崎を前面から撮影

Appleが川崎に進出したのは、2019年12月14日。今まで、銀座、渋谷や表参道、丸の内、心斎橋などハイブランドとして有名な地域に出店をしてきたAppleにとっては、川崎への進出は少し変わった戦略です。

今回、Appleがなぜ川崎に進出したのかを考え、今後の国内におけるマーケティング戦略及び地方(特に山形)に与える影響にについて考えていきます。

日本におけるApple直営店の歴史

日本国内において、Apple Storeができたのは2003年の出来事。11月30日に東京の一等地中の一等地である銀座に店舗を構えました。2003年と言えば、当時はまだiPhoneもMacBook Airすらなかった時代。Appleの認知度や功績がまだ世間に認識されていなかった時代、そして、マイクロソフトが主流でApple製品を使っている人は少し変わった人と思われていた時代でした。

その後、渋谷、大阪の心斎橋、仙台、札幌、名古屋栄、福岡天神に出店を進め、全国的なAppleの直営店ネットワークが構築されました。発売されたばかりのiPhoneやApple Watch、AirPods Proはビックカメラやヨドバシカメラなどの大型小売店に行っても入荷がない状態のでも、Apple Storeに行けば優先的に入荷されていることが多いです。

その後出店計画は長らくなく、札幌の移転を前提にした閉店、仙台からの撤退などがありましたが、表参道や新宿、丸の内、川崎、渋谷や福岡店のリニューアルを踏まえ、現在では直近の進出地域である川崎を合わせて国内で10店舗を数えるに至っています。

Apple川崎は、JR川崎駅直結のラゾーナ川崎内にあります。京急川崎駅からも徒歩7分ほどの立地。

ラゾーナ川崎では、BEAMSやタグホイヤーなどセレクトショップやブランドショップもあり、川崎市では人気のショッピングスポットと言えます。

ラゾーナ川崎内には芝生もあり市民の憩いの場となっている

ここで、川崎とそれ以外の店舗には明確な違いがあります。

渋谷や表参道、新宿、丸の内などハイブランドである地域とどちらかというと庶民的なエリアである川崎。

エリア特徴
銀座なんと言っても東京、ってことは日本で最も地価が高いエリア。高級ブランドが軒を連ねる街。
渋谷トレンドに敏感すぎる若者が集まるエリア。アパレル店やIT企業が集積している。
表参道渋谷駅から歩いて20分ほどのエリア。渋谷と同様にトレンドに敏感な人が集まる。原宿、神宮前、青山と一体化したエリアであると考えると若者から中高年までの層がターゲットの街と言える。
新宿伊勢丹や三越など百貨店が集積する新宿三丁目にある。渋谷よりもターゲットする年齢層が高めか?ターゲットは銀座と同様とも言える。
丸の内言わずと知れた日本のビジネス街の筆頭格で、数多くあるビジネス街の中でも長い歴史を持つ。三菱地所が大半の開発を行っているため、「三菱村」とも言われる。ちなみに渋谷駅周辺は「東急村」と言われる。皇居や東京駅が徒歩圏内にあり、日本の中心地と言っても過言ではない。
名古屋栄東京で言うと渋谷みたいなところ。
京都東京で言うと渋谷みたいなところ。
心斎橋東京で言うと表参道みたいなところ。
福岡天神東京で言うと渋谷みたいなところ。

上記表をみると、やはりAppleは高級な街に進出していることが一目瞭然です。これには、AppleがスマートフォンやPCを高いブランド力があるプロダクトであるという自負から来ているものだと思われます。店舗の進出を一種のブランディングとして活用しているのです。

ターゲット層の拡大にみる今後

しかし、どうでしょう。川崎は。都会的すぎる東京とおしゃれな街として有名な横浜に挟まれている川崎はそれほどハイブランドの街であるとは言えないはず。

従来の方針とは異なるエリアに進出したAppleは今後、日本における事業展開をどのように行っていくのでしょうか。川崎への進出から、ある方針が見え隠れします。

Tech Crunchでは以下のように記載があります。

ファミリー層やシニア層へのさらなる認知と取り込みに力を入れていく狙いがあると考えられる。(中略)スマートフォン市場の縮小がニュースになる中、アップルとしてもより身近にアップル製品が触れられる場所として、集客が見込める大型ショッピングモールを選んだと考えられる。

とあるように、従来のペルソナとは異なる客層をターゲットとしていると考えられます。

さらには、

一方で、アップルのこの施策が成功してしまうと、直営店の出店計画がアップル専門店であるApple Premium Resellerと競合する可能性が出てきた。

ともあり、既存提携店との関係性にも変化が生じることも危惧されています。

ターゲットをSTP分析してみましょう。参考として、従来のハイブランドエリアと比較しています。

エリアS
対象となるマーケットの切り口
T
切り分けたマーケットの中でサービスを提供する場所
P
サービスを提供するマーケットの中で、どのようなサービスを提供するか及びブランディング
銀座や渋谷、表参道、丸の内、新宿、京都、心斎橋トレンドへの敏感度、最先端テクノロジーの関心度トレンドに敏感な層、テクノロジーの関心が高い層洗練されたデザイン、従来のライフスタイルにイノベーションを起こすプロダクトを提供する
川崎単身世帯か家族連れか家族連れ生活に利便性を提供、Apple製品の普及

正直、ハイブランドのSTPは教科書通りにやればいいのでとても簡単ですが、川崎に対するSTPはほんの少しではありますが分析の難度が上がっているような気がします。

STPの講評なのですが、従来のハイブランドエリアへの進出は、キーワードとなるのが「トレンド」と「テクノロジー」であると思われます。

渋谷をイメージするとわかりやすいかと思うのですが、渋谷は流行に敏感な層が来る街です。「テクノロジー」で言えば、最先端のものであれば何にでも飛び込んでいく、そこにはリスクもつきものですが、とりあえずやってみたりコミュニティに入ってみる感覚。実際、そのような動きが2000年代初頭にITベンチャー企業が集積した「ビットバレー構想」が生まれたわけですから。

「トレンド」で言えば、Apple製品を身につけることが一種のファッションであることを深く認識している層が多いように感じます。Appleを身につけることが外見を高める、さらに言えば同性からの憧れ、異性を引きつけるセクシーなアピールへと繋がるのです。

店内で展示されているiPadやiPhone

一方で川崎はどうかと言うと、渋谷に行くような層よりも高齢者やそもそもApple製品にあまり関心がないような層へのアプローチに舵を切っているような感があります。ショッピングモールへの出店で、他の目的でラゾーナへと来た人々がついでに覗いてみようと思うような展開。それをAppleは望んでいるのだと思います。

Apple川崎を広場から撮影

川崎への進出を通して、Appleのハードウェアの利便性(軽さ、物理的ボタンの少なさ)、ソフトウェアの快適性(直感的に判断できるインターフェイス)を提供することで従来には届かなかったターゲット層へのアプローチを試みていると言えます。

てことは将来的に山形にも?

川崎にような店舗展開をすることは、人口減少、少子高齢化フェーズに入った日本において有効な展開です。今後、東京しか人口増加が見込めなくなる(しかも社会人口増)日本において、流行に敏感な層の中心である若者が少なくなっていきます。そして、高齢化により、健康、医療、介護分野への関心、国内市場拡大が見込まれていく中でApple Watchを筆頭に医療分野への進出を伺うAppleとしては将来的な市場獲得のためにも、理にかなっていると言えます。

子供連れの親

川崎以外にも、山形や金沢、広島などAppleが進出していないエリア、そして進出が望まれているエリアに進出することで従来の層とは異なる層へのアプローチをし続けることがAppleには必要であると思われます。

特に今、山形では老舗百貨店である大沼が倒産した影響で中心地が空洞化している状態です。跡地への活用としてAppleが進出することが望まれているのです。

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