若者流入率日本一!福岡のスタートアップが今、熱い!のか!?

こんにちは、中小企業診断士の鈴木(@Taiki__Suzuki)です。先日、ヤマガタ2030年を語る会で県外転出者を対象に行われましたが、それに参加して、他参加者のキャリアに圧倒されて食傷気味の鈴木です。

今回は福岡のスタートアップについて記載しようと思います。私は福岡には人気ロックバンドTHE YELLOW MONKEY(ザ・イエローモンキー)のボーカル、吉井和哉さんの年末恒例のライブで会場がマリンメッセで開演された時しか行ったことがですが、とても好きな街です。空港から都心まで異常に近く(ほんと異常)、コンパクトシティであるので、あらゆるものが半径2.5km圏内で手に入ります。山形県出身でなければ、福岡に移住することを本気で考えていたかもしれない。それほど他県の、かつ東北という福岡からかけ離れた土地の人間にとっても魅力的な街だと思います。

以前に神戸のスタートアップについて記載しました。「神戸モデル」の特徴は簡単に言うと、何点かの特徴が挙げられます。詳細記事は以下のリンクよりお読みください。

さらに以下が神戸モデルの主な特徴です。

  • 首長、神戸市長のリーダーシップ
  • そして、それに伴う行政主体のエコシステム
  • 500 Startupsという巨大なアクセラレーター
  • 政令指定都市中で高い人口減少率が予想される中でスタートアップエコシステムを生み出す必要性
  • weworkとの密接な連携

他の自治体にはない政策ばかりです。スタートアップと言えば、神戸以外にも東京都渋谷区、そして福岡市の取り組みが注目されています。今回は九州の代表都市、福岡市のスタートアップの特徴を明らかにしたいと思います。

福岡ってどんな街?

まず、スタートアップはおいといて、福岡県福岡市を紹介します。

8区(東区、博多区、中央区、南区、城南区、早良区、西区)
人口(人)
※福岡市ホームページ、2019年12月1日現在
1,595,365人
札幌市は197万人、川崎市は153万人
面積(福岡市ホームページより)343.46㎡
主な本社企業所在地妖怪ウォッチで有名な「レベルファイブ」
出身有名人タモリ、椎名林檎、浜崎あゆみ、陣内孝則、麻生太郎
中心地博多駅周辺、天神

ざっと、こんなところです。

福岡のいいところは冒頭にも記載しましたが、空港から福岡市の都心までとてつもなく近いこと、東京に住んでいる人間にとってはこれが最大のメリットです。東京から福岡で飛行機で1時間40分程度。2時間あればビジネス街の博多や商業地である天神に着きます。

福岡空港駅の案内板

そして、福岡市との競合について。やはり競合といえば札幌ですよね。

札幌と福岡ってなんとなく北と南の大都市でライバルのような関係です。北海道日本ハムファイターズと福岡ソフトバンクホークスの戦いは、まさに生きるか死ぬかの戦いです(てきとう)。

しかしながら、札幌の方が人口多いんですね。

ただそうは言ってもアップルストアは札幌にはないけど福岡にある。福岡ドーム(ヤフオクドーム)でTHE YELLOW MONKEYはライブしたことあるけど、札幌ドームはない。などなど福岡にあるものはたくさんあります(雑)。逆に福岡にないけど札幌にあるものもありそうですが…。

Apple Store関連の記事はこちら。次に国内にApple Storeができるとすれば山形です、多分。

福岡の名物もつ鍋の提灯

そして、今回のテーマ、スタートアップ。そして、まずここで書いておきたいのが、福岡市の開業率は全国トップであるということです。

福岡市長のプロフィール
福岡県の建物の入り口
これは福岡県の建物

福岡市役所が政策の目玉としてスタートアップを取り上げたのは、福岡市長の影響がとても大きいです。市長である高島宗一郎氏は1974年生まれ、九州朝日放送のアナウンサーを経て、2010年に36才という史上最年少の若さで当選し、アメリカ・シアトルの影響を受けて、2012年にスタートアップ都市・福岡宣言を行います。そして、福岡スタートアップカフェの開業など創業率向上に向け様々な施策に取り組んでいます。高島市長は現在2期目です。

福岡の強みは「人」

市長が創業政策に取り組めた要因というのは、福岡はもともと創業の動きが大きい街だったことが大きいことが挙げられます。開業率が全国トップであること以外にも人口増加率が政令指定都市中、1位であることが大きいのです。そして、人口増加率を大きく引き上げているのが若者世代です。若者世代の流入が多いことで産業の発展が見込める街です。事実、若者の起業者が政令指定都市中、最も多いのが福岡であり、わが国の人口減少社会、東京の一極集中、それに伴う地方都市の産業衰退が予測される中で東京に負けない都市は福岡であると言うのは定量的に考えて大げさではないことはお分りいただけたと思います。

さらに、福岡市の将来的な発展を予想されるデータがあります。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口」によれば、政令指定都市の中においても、2045年の人口は大阪市、京都市、神戸市の人口は2015年の人口に比べて10%~15%の減少が予測される中、福岡市は8%程度の増加となっています。

人口増加の要因としては九州の中で最も人口が多く、大学や企業が集積している地域であることから、九州の人材を集めやすい点が挙げられます。

さらに、国土交通省九州運輸局の「九州への外国人入国者数の推移について~2019年9月(確定値)及び10月(速報値)~」によれば、入国者数は2018年に最高値の5,116,366人に達しています。2011年は726,459人だったことを踏まえると短期間の間に約7倍の増加です。

そして、その増加を支えているのは「福岡空港」と「博多港」です。地理的に東京と中国の間に立地しており、韓国や東南アジアにも近いことから福岡は「アジアの玄関口」としての機能を持っています。事実、外国人入国者数の内訳を見てみると、台湾、中国、香港、韓国であり、アジアからの人気のほどが伺えます。

国家戦略特区
屋台で賑わう
福岡といえば屋台ばい

福岡のスタートアップモデルのライバルとしてあげられるのが、渋谷や神戸ですが、それらの都市にもない利点が福岡にはあります。

それが、「国家戦略特区」です。

国家戦略特区とは、首相官邸のホームページによると、

“世界で一番ビジネスをしやすい環境”を作ることを目的に、地域や分野を限定することで、大胆な規制・制度の緩和や税制面の優遇を行う規制改革制度です。平成25年度に関連する法律が制定され、平成26年5月に最初の区域が指定されました。

とあり、簡単に言うと「その土地を生かした政策を実現し経済成長するために、規制緩和を国が行っていきます」と言うものです。

福岡市は2014年9月9日に「グローバル創業・雇用創出特区」として認定を受けました。具体的な施策は以下のとおりです。(福岡市ホームページより創業に関わる事項のみ抜粋)

規制改革事項概要
雇用労働相談センターの設置 雇用条件の明確化のための雇用労働相談センターの設置
 グローバル企業やベンチャー企業等を支援するため、これらの企業の抱える課題を熟知する者が、雇用ルールの周知徹底と紛争の未然防止を図るための高度な個別相談対応等を行う。
外国人創業人材等の受入促進(スタートアップビザ) 創業人材等の多様な外国人の受入れ促進
 創業人材について、地方自治体による事業計画の審査等を要件に、「経営・管理」の在留資格の基準(当初から「2人以上の常勤職員の雇用」又は「最低限(500万円)の投資額」等)を緩和。
特定営利活動促進法の特例 NPO法人の設立手続きの迅速化
 ソーシャルビジネスの重要な担い手でもある特定非営利活動法人の設立を促進するため、その設立認証手続における申請書類の縦覧期間(現行1か月)を大幅に短縮。
創業者の人材確保の支援に係る国家公務員退職手当法の特例官民の垣根を越えた人材移動の柔軟化
 スタートアップ企業における優秀な人材確保のため、国の行政機関の職員がスタートアップ企業で働き、一定期間内に再び国の職員になった場合の退職手当の算定について前後の期間を通算。
人材流動化支援施設の設置 スタートアップ人材マッチングセンターの設置
 国、自治体、大企業に勤務する人材をスタートアップ企業で働きやすくするため、「人材流動化センター(仮称)」を設置し、労働市場の流動性向上、スタートアップ企業における優秀な人材の確保に資する援助を行う。
特定実験試験局制度に関する特例電波に係る免許発給までの手続きを大幅に短縮
 電波を使用した実験に係る簡易な免許手続きである「特定実験試験局制度」について、特区内では、区域会議の下で、更に円滑な調整を可能にし、免許の申請から発給についても原則「即日」で行う 。
特定事業実施法人の所得に係る課税の特例 スタートアップ法人減税
 区域計画に定められた事業を実施する一定の法人について、当該事業による所得金額の一定割合を課税所得から控除する。
開業ワンストップセンターの設置法人設立及び事業開始時に必要な各種手続きをオンラインで実施可能とする福岡市開業ワンストップセンターの設置
 外国人を含めた開業の促進のため,登記,税務,年金・社会保険等の法人設立及び事業開始時に必要な各種申請等をオンラインで実施可能とし,関連する相談業務や各種手続きの支援を総合的に行う。

上記のとおり、外国人が起業しやすくするための在留資格の緩和、社会課題を解決するためのNPO法人設立の迅速化、国家公務員のスタートアップへの受け入れ、法人税減税など創業に関して様々な角度から国による様々なサポートを施しています。

なお、創業以外にも医療や保育、道路の占用許可など多様な認定を受けています。

福岡の取り組み
西鉄福岡駅南口の入り口
福岡の私鉄といえば西鉄

国による福岡に対する支援を国家戦略特区の認定という形で見てきましたが、肝心の福岡市役所はどのような取り組みを行っているのでしょうか。

福岡のスタートアップの中心地、いわばプラットフォームは天神駅から徒歩7分、廃校の小学校をリノベーションした施設である「Fukuoka Growth Next」です。福岡市役所と地域の民間企業や金融機関などの連携により、事業計画化や資金調達など創業に特化した支援を一元的に行うことを目的に設立されました。

参画する企業や団体にはTSUTAYAを経営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社や日本政策金融公庫、中小機構、福岡商工会議所など民間、公的機関関わらずサポートする体制にあり、エコシステムを形成しています。

スタートアップカフェ

「Fukuoka Growth Next」の中核的存在が、「スタートアップカフェ」です。

ここでは、起業相談はもちろん、人材のマッチングや専門家相談、イベント開催、コワーキングスペースの使用に至るまで起業希望者が自由に動き回れる環境が提供されています。

具体的に見ていくと、相談員常駐の元で経営戦略やマーケティング戦略策定や海外進出など創業前や創業後に関する多様な課題やニーズに対応しています。また、外国人の創業相談も受け付けているなど、福岡で創業を希望するものに広く門戸を開けております。

また、カフェの会員になることで、sansanの月額料金割引、IBMによるGlobal EntreprenurProgram for Startupsの活用(※条件あり)、アマゾンによるスタートアップ支援プログラム”AWS Activate”の提供など各種ITサービスの充実化やアクセラレーションを受けることができるのも特徴です。

福岡の課題

福岡のスタートアップに関する各種支援施策を記載してきましたが、やはり課題も同時に存在します。

まず、スタートアップの定義の「ズレ」について。

福岡市役所を中心として、スタートアップという名前で各種事業を行っていますが、スタートアップは「既存市場にはない市場」、つまり自社の製品やサービスによって新たな市場を作るというのが一般的な定義です。飲食業や小売業、サービス業や従来型の製造業の創業というのは既存市場への参入なので、厳密な意味でのスタートアップではありません。しかし、スタートアップカフェでは従来型の創業も対象として含まれており、創業とスタートアップが混在している状況のようです。

混在しててもいいじゃん、と思う方もいるかもしれませんがそれではダメですね。

世界的に厳密な意味でのスタートアップ・エコシステムを生み出そうと各国が躍起になっている中、定義とズレたまま取り組むことによって、創業ではなくスタートアップを希望する外国人や海外発のアクセラレータ、VC(ベンチャーキャピタル)が集まってこなくなる可能性があります。そして、国内にも渋谷や神戸がエコシステム創出への動きを見せている中、定義のズレがこれらの都市と差を広げられる要因にもなり得ます。厳密な意味でのスタートアップに集中しなければ、スタートアップに特化したエコシステムは生み出せないのです。

さらにエコシステムという観点で言えば、スタートアップ希望者や専門家、国や福岡市、商工会議所などの公的支援機関、金融機関などがアクターとして存在しますが、決定的に不足しているのが一つあります。

それは、アクセラレーターの存在です。その存在の有無が渋谷と神戸との違いの1つとして挙がって来るのですが、渋谷にはplug and playが、神戸には500 acceleratorsがアメリカ・シリコンバレーから進出していますが、福岡には渋谷や神戸のような強力なアクセラレーターが不在なのです。国や市が中心となってエコシステムを形成してるのが現状ですが、スタートアップのプロであり、スケール化に至るまでの戦略策定を生み出す高いスキルやスピード感を持っているアクセラレーターの誘致が福岡の課題であり、現状の「創業支援」ではなく、よりイノベーティブな「スタートアップ」の創出を実現するためには、誘致が必要であると言えます。

アクセレレータとは何かを書きました。

まだ成長をし続けなければならない
西日本シティ銀行の看板
福岡といえば西日本シティ銀行、なのか??

2019年5月30日の日経新聞によれば、福岡は大阪にスタートアップ投資額を抜かれました。福岡は前年に比べて40%減の75億円であり、3位から5位に下降。下降の要因として、

成長した企業の調達が一段落した。今は立ち上げ期の小規模な調達がおおい

と福岡のベンチャーキャピタルが発言します。

しかし、福岡における課題はここでもあると思っています。というのも投資額は増え続けなければならないという点です。福岡がスタートアップに行政として政策に取り組むことで投資額が増加傾向にあり、京都や大阪を抜くなどの動きは一時期がありましたが、シリコンバレーをはじめとした世界のエコシステムの投資額に比べたらまだまだ世界と肩を並べているとは言い難い。福岡が世界のスタートアップやアクセラレータ、投資家から選ばれる都市になるためには投資額は日本との競合ではなく、世界を意識して増やさなければなりません。

最後に
博多駅前の住所表示

福岡はよく「支店経済」であると言われます。支店経済というのは本社機能ではなく、東京や大阪の大手企業が福岡支店を設ける一方で福岡発の企業が少ない状態。このデメリットは、景気悪化の波の影響を受けやすいという点。景気が悪化した場合、まず組織の末端からコストカットを行うので、支店は本店に比べて影響を受けやすいのです。それを解消するためには、福岡発の企業を生み出し、福岡に根付かせることが重要なのです。

課題としても記載しましたが、スタートアップと創業を明確に区分した上で、スタートアップに集中して取り組むことが福岡発の企業を生み出す契機になると思われます。

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